【漫画】安野モヨコ『働きマン』仕事と全力で向きあう生き方がここにある
” 私にとって、仕事ってなんだろう ”
” 別に、好きでやってる仕事じゃないし… ”
” がむしゃらに頑張れる仕事があるあの人、羨ましいな ”
今の仕事をしていて、ふと、そんな思いを抱いたことはありませんか?
若干の不安を抱きながらも、新しい仕事に対して期待や希望を膨らませていた入社当時。それが、1年が経ち。3年が経ち。5年が経ち…。
徐々に自分の仕事の意義が分からなくなって、働くことにちょっぴり疲れてきたな、という人。それでも、目の前の仕事について真剣に考えちゃう人に紹介したい、今回の作品。
『働きマン』
初読は学生の頃でしたが、社会人になって読み返した今の方が、共感できる場面が増えた気がします。日々の業務で感じていること、逆に、日々の業務に忙殺されて見失いがちなこと。仕事をするうえでのそんな、苦悩や葛藤、ふとした瞬間の喜びが詰まっていて、ポンッと背中を押してくれる作品です。
目の前の仕事に「どう向き合うか」
この漫画の主人公、週刊「JIDAI」の編集者 ー 松方弘子(28歳)ー は、恋人との約束があっても、迷わず仕事をとるようなバリバリのキャリアウーマン。…いや、” 働きマン ”なわけですが。
登場人物全員が彼女のように、全力で目の前の仕事に向き合えているわけではないのです。
例えば、弘子の恋人で、建設会社に勤務する ー 山城新二(28歳)ー の場合。
俺は何がしたいんだろう。何がしたくてここにいるんだろう。
この仕事の何が好きだと言えるだろう。(引用:『働きマン』1巻5話)
入社前に思い描いていた理想の仕事と、目の前の実際の仕事との乖離に、悶々とする彼。日々全力で仕事に打ち込む弘子のそばにいると、自分がダメに思えてしまう。
あー、わかるわかる!わかるよ、その気持ち!!思わず抱き寄せて背中ポンポンしたくなるくらい、わかるよ!!・・・ありませんか??他人の働いている姿がなんだか凄くキラキラして見えて、嫉妬しちゃうこと。 とりわけ、自分が思い悩んでいる時には。
そんな思いと葛藤する人物が、この漫画にも出てくるんです。一人じゃなく、他にもまだまだ。ちなみにこの話の中で、新二は次のように言っています。
「この仕事のどこが好きか」なんて考えてるヒマがあったら
どんどんやりゃよかったよ(引用:『働きマン』1巻5話)
皆が皆、自分の思い通りの仕事に就くっていうのは難しいのかもしれない。そもそも、「仕事でやりたいことって何?」と聞かれて即答できる人は多くないでしょう。
だからこそ、自分なりの価値を見出せるように、「まずは、目の前の仕事を受け入れてみて、そして、納得いくまで足掻いてみたら?」そう言われているような気分になるんです。
苦9割:楽1割。仕事ってそんなもん。でもその1割がデッカいんだ。
見出しの比率はちょっと大げさかもしれませんが・・・。
どんなに「天職だ!」と思える仕事に就いたとしても、毎日毎秒を「楽しい!」と思える人って中々いないでしょう。決して、楽な仕事ばかりじゃないですし、コツコツと地道な作業を延々続けることもあります。
最初のうちは全てのことが新鮮で、喜ぶ瞬間もそれなりにあったと思います。何かができるようになった時、何かが達成した時、と。
けれども段々仕事にも慣れてきて、できることも増えてきて。そうすると滅多に喜ぶこともなくなり。そうなると、次第に手なりで仕事をするようになってくる。とにかく業務が円滑に進むことだけを考えて。
そして急に虚しくなるんですよね。「私、何やってるんだろう」って。
はい。『働きマン』にも出てきますよ。そんな人物が。
例えば、弘子の同期で営業部に所属するー 千葉真(28歳)ーの場合。
思い入れるな。頑張るな。
フラットに円滑に進めるには
結局それが一番いい方法(引用:『働きマン』2巻10話)
ある同僚の言葉がきっかけで「一生懸命やって裏切られるのは嫌だ」と、心をこめて仕事をすることを一度は放棄してしまう彼。余計な波は立てないよう、真心など捨てて。全ては業務が円滑に進むことだけを考えて。
そんな彼がこの話の最後に「うれしいよ・・・、うれしいな・・・」と言って涙を流すのですが。ここで私も、もらい泣き。ツツーっと、涙が頬を伝いました。
この見出しの最初にも書きましたが、毎日毎秒を「刺激的で楽しい!」と思いながら仕事ができる人ってそんなにいないと思います。けれど、全体を10割として、心の琴線に触れる瞬間が1割でもあったとしたら、その1割ってすごく大きいと思うんですよね。
残りの9割が大変だったりコツコツと地味だったりしても、その1割の為にまた頑張ろうってなるんですよね。
その1割がなかなか訪れなくて、ついつい立ち止まりそうになった時、私が一番に読むのは2巻のこの話だったりします。
あたしは仕事したなって思って死にたい
『働きマン』1巻1話の最後。主人公である松方弘子の言葉です。
弘子の後輩で、新人編集者のー田中邦夫(22歳)ーの言葉、
オレは「仕事しかしない人生だった」
そんなふうに思って死ぬのは ごめんですね
(引用:『働きマン』1巻1話 *田中の言葉*)
と、対比するかたちで描かれています。
あたしは仕事したなーって思って死にたい
(引用:『 働きマン』1巻1話 *弘子の言葉*)
弘子と田中だけとっても、これだけ非対称なのですが。
『働きマン』に登場する人物たちは、皆が皆、仕事に対して各々の価値観を持っていて、その中で葛藤・苦悩しています。
そして皆が皆、仕事に対して各々にプライドを持っているように思えます。例え、仕事への取り組み方や考え方は違っていたとしても。
(主人公弘子ふくめ、女性社員の働き方・闘い方の違いについては、また別途詳しく書けたら面白いだろうなあ。)
引用:『働きマン』1巻1話
仕事でちょっと疲れてしまった時。立ち止まってしまった時。
でも、もうひと頑張りしたいな。誰かに背中を押して貰いたいな。
そんな時、私はこの漫画を手にとります。
余談ですが、この漫画の1巻が発売されたのは2004年。既に10年以上経っているんですね。全く色褪せてない!
最後に、
「あなたにとって仕事とは?」