【小説感想】『世界から猫が消えたなら』大切だと思えることって結局そんなにない。
先日、プチ失恋をした。毎日連絡を取り合っていた人で「好きかもしれないなあ」と思い始めていた矢先に「彼女ができた」と報告されたのだ。全く傷ついていない自分がいた。そもそも本当に好きだったのかさえ怪しいところだ。
そういえば初めて付き合った恋人から別れを切り出された時も、開放感さえ感じはしたが、寂しさや虚無感を抱くことはなかった。私をよく知る友人にも「まあ落ち込む質ではないよね」と言われたほどだ。
幼い頃から10年以上続けていたピアノや習字といった習い事も東京に上京するのと合わせてあっさりと辞めた。
「失ってはじめて、その存在が大切だったことに気づく」とよく言うが、私にしてみれば、「失ってはじめて、実はそこまで大切ではなかったことに気づく」という方が圧倒的に多いように思う。
だから時々、虚しくなる。「好きだなあ」と思えるものに対峙している時に、「でもこれが無くなったところで、私は特になんとも思わないんだろうなあ」とふと思うことがある。そうなると「私は本当にこれが好き(大切)なのだろうか」と疑問を抱かざるをえない。なんとも、虚しい。
それでも最近では「まあ、何かにそんなに執着し続けないのが私か」と割り切っている節がある。というのもの、その存在自体が自分にとってそれほど大切でなかったとしても、その存在に向き合っていた時間や、その時間があったからこそ残る思い出は、きっと大切なものであるはずだと思えるようになったからだ。
お正月に家族が集まれば、「(亡くなった)婆ちゃん、あんたが弾くピアノの曲の中で、どんな難しい曲よりも、なぜか“ ネコ踏んじゃった ”のジャズver.が好きやったよねえ」と思い出話しに花が咲く。ピアノという存在が与えてくれた、私にとって大切な思い出だ。
確かに、「これがないと生きていけない!!」と公言できるだけの存在(物でも人でも)があるということは、今でも羨ましいし憧れを抱いている。けれどまあ、そんな存在に出会うことなんて滅多にないだろう。だから私は、その存在が与えてくれた経験や思い出だけは「大切なものなんだ」と否定せずにいようと思う。
さて、こんなことを突然書いたのは以下の作品を読んだから。
『世界から猫が消えたなら』(著:川村元気)
映画化(佐藤健主演)もされているベストセラーなので、もはや周知の人も多いかと思いますが、簡単にあらすじを以下引用。
これは余命わずかの僕と僕が生きるために消してしまった「かけがえないもの」の物語。
主人公は30歳の郵便配達員。愛猫キャベツとふたりぐらし。
母を病気で亡くしてから、実家の父とは疎遠になってしまいました。
恋人はいません。別れてしまった彼女のことを、まだ想い続けています。
趣味は映画観賞。友だちは映画マニアの親友が一人だけ。
そんな彼が、ある日突然、余命わずかの宣告を受けてしまいます。
脳に悪性の腫瘍ができていたのです。
ショックで呆然とする彼の前に、とつぜん、自分と同じ姿をした悪魔が現れて言いました。
「世界から何かひとつ、ものを消すことで、1日の命をあげよう」…。
悪魔のささやきに乗せられた主人公は、次々とものを消していきます。
電話、映画、時計、そして、猫。
ところが、何かを消すと、大切な人たちとの思い出も一緒に消えてしまうことになり…。(引用:Amazon)
文章が簡潔で淡々としており、テーマも非常にわかりやすいので、とにかく読みやすい。絵本感覚で読めるまさにエンターテインメント作品だと思う。気になる方は、自分にとっての大切な存在を思い浮かべながら、ぜひご一読を。
以上!
※川村元気さん別著書については以下。
※映画も観てみようかなあ。